2006年 07月 11日
先日、伊勢丹の食品担当のマネージャーさんから突然の電話。 9月の7日間のイベントにぜひ出店できないかということ。 ・・・伊勢丹は7年前、新宿の伊勢丹本店に2週間の企画で参加したことがあった。 夜中に焼いて、焼き立てを朝出荷という、かなりハードな生活。 当然お店もあって、両方でのこと。 2週間で3キロやせた。 さっそく、相談に来るという。 私の中では、今年に入ってお客様の流れがいい感じで、このままで充分と思っていた矢先のお話なので、お断りするつもりでいた。 月曜日の夕方、マネージャーさんがいらした。 かなり緊張した面持ち。 事務所に通すやいなや、自分の伊勢丹で経歴を話し始めた。 3年間新宿伊勢丹でパンを担当していたという。 また、食品を担当しての面白みや仕事への熱意を一生懸命に話してくれた。 彼は実家が新松戸でかつてのパオもご存知だという。 そして、こんなにもおいしいパンをぜひ伊勢丹からたくさんのお客様に伝えたいという。 1時間半、とにかくお願いされた。 「どうかお力を貸してください。」と、 私も夫もパンにハマって好きでパンを焼いていただけのこと。 何度も何度も頭をさげられるような人間でもない。 まして、伊勢丹の責任者的方に・・・・。 10年前の自分をふと考えた。 自分を見失って、生き方に迷っていた20代後半。 ボロボロになって、自己反省して落ち込んで・・・・ 私は酵母を起こしてパンを焼いて癒された。 そんな昔の自分を思い出した。 大変だから断ろうと思っていた。 今のまま、すこしづづ変化するパオを楽しもうと思っていた。 けれど、ここまでお願いされると・・・・。 パンを焼き始めて11年。 新松戸に開業してちょうど丸10年。 これも何かの節目かと考えた。 たまたま、彼のご両親がパオの常連さんであった。 お母様が、パオのクロワッサンアマンドが大好きで、毎日のように買いに見えた。 そして、いつもニコニコして「アーモンドはお肌にいいのよね。」と微笑む。 毎日アマンドを焼くときお母様の顔が思い浮かび、5~6個多めに焼く。 最近は少し体調をくずし、前ほどは来ない。 けれど、ご近所ということもあり、お父様と一緒にあるいている姿に出会う。 お父様が奥様をいたわりながら歩く姿(ときどき「早くしなさい。」と声をかけている) お二人の姿を拝見するつど、忙しい私は数年後迎える夫婦2人の生活とダブらしていた。 その息子さんに真っ赤な緊張した面持ちで何度も頭を下げられてしまったら、 「もう、よしてください。私たちはそんなたいそうな人間ではありませんから。」と恥ずかしくなっていた。 製造量を増やすことで、お店の常連さんにご迷惑をかけたくないという思いから、即答も出来ない。販売員の手配その他準備が必要なので、数日時間をもらうことにした。 #
by paomama
| 2006-07-11 04:01
| 天然酵母パン
2006年 07月 06日
2003年10月、急にふってわいたお見合い話のように、今のお店の話が来て、バタバタと進み、2004年2月オープン。 あっという間に2年半。 裏手のパン屋から、表通りに越してきて、始めは通いの生活に少々疲れ気味。 引っ越した時、みりは4年生、てつせいは1年生、ちかはまだ2歳半。 まだ、おむつをしていた。 引っ越してしばらくは、家事と仕事との両立に少々疲れ気味。 昨年は何度引っ越したことを後悔したことか、 朝4時頃、仕事にいこうとすると「ママ行かないで」とちかが後追いをする。 まだ3歳の子供には「ねんねしていてね。」が通じない。 みりに声をかけて「ちかをお願い。」と頼む ちかも半べそで「ママ、バイバイ・・・・」としぶしぶ納得。 2月の朝4時ごろは真っ暗。 わずか2~3分の距離を自転車で走る。 後追いを振り払ってきたことで胸が苦しい。 「私は母親なのに・・・」と切ない。 パンを作りながら切なくて涙があふれそうになる。 夫はもくもくと仕込んでいき ミキサーの音だけが工房にひびく。 子供のことに想いが向くといたたまれないので、なんとか・・・・と考えた。 「そうか!ちかが起きてしまったら、お店に連れて行けばいい。」 寒かったらマフラーぐるぐる巻きにすればいい。」そう思ったらすっと楽になり、 早速次の日「ママ行かないで」と3時30分頃目覚めてしまったちかに 「ママとお店に行こうか。」と暖かくいっぱい着せて出る。 2月の4時ごろは真っ暗で寒い。 「ちか、お星様がでてるね。」自転車でわずかな距離。 さすがに3歳児を自転車の後ろに乗せているのはかなり変! パン工房にちか来ると 「パパ!」と夫のところに駆け寄ると「何だよ~!」と言いながら夫もうれしそう。 かなり贅沢な話だけれど、パオは裏でやっていたときはずっと子供がそばにいて仕事をしていたので、ちびが工房にいる風景はなんかうれしい。 それでも2時間もすると「ママ眠くなっちゃった。」とちか バックヤードにあるキャンプ用の簡易ベットを作り、ちかはお休みタイム。 その後、みりと哲も工房に来だした。 みりと哲のくだらないケンカが始まり、うるさくて仕事にならない。 と、いう事で以前のままパン屋をしていたらもっと大変だということが解り、引越しは正解。 しばらく、ちかと一緒の出勤は続き・・・・。 最近は大きくなって、遊びが活発なせいか、全く起きない。 ちかちゃんも来週の日曜日5歳になります。 #
by paomama
| 2006-07-06 12:49
| 天然酵母パン
2006年 07月 05日
流山からパンを買いに来てくれる佐々木さんが、なにやら野菜でも入ってそうな袋を持ってお店に入ってきた。 「食べて。」とどさっと、レジ台の上に袋を置く。 見れば、トマトときゅうりが山の様に入っている。 「いつもおいしいパンを焼いてもらっているから。」と、 「えーこんなにたくさん!」野菜大好き大家族の我が家には、たいへんうれしい贈り物。 佐々木さんは、パオが裏手でお店をしていたときからのお客様。 引っ越してからしばらくお会いしていなくて、 昨年末、大きなおなかをして買いに来てくれたのは3~4年ぶり位。 3歳になるお子さんがいて、仕事もして、毎日大変で、パオに来ると 「朝早くからがんばってるなぁ」と励みになると言っていた。 今年に入ってから、頻繁に買いに来てくれる。 彼女のお気に入りは全粒粉の食パン。そしてパオの焼き菓子。 素朴な味と日持ちがするのがいいと言う。 「本当においしいよね。私なんかどうしてこんな味がするんだろうと、全粒食パン1枚をまじまじとながめているんだよ。」なんてうれしいことを! 「埼玉の農家さんから頂く農林61号という小麦を石臼でていねいに引いて、ほら、あんな風に振るって入れてるの。」ちょうどスタッフが粉ふるいをしていた。 「だからおいしいんだね。」と納得 朝早くからがんばっている夫にすかさず 「シェフ!おいしいって言って下さっているよ。」売り場の空気を工房内に流すのは私の役割。 こもって仕事をしているから、なかなかお客様の声が聞きにくい。 こんな風に言ってもらえるときほど、お客様と製造の人間をつなげたいといつも考えている。 「有り難うございました。」夫もちょっとうれしそう。 #
by paomama
| 2006-07-05 07:39
| 天然酵母パン
2006年 07月 01日
変なタイトルだけれど、毎週土曜日はずっとおー君が手伝いに来る。 おー君は奥さんも子供もいるサラリーマン。 そしてパンが趣味。 おー君と知り合ったのは今から4〜5年前の事。 夫のパン講習会に二回も参加してくれた。 それ以前もパン教室にはずいぶんお金をかけたようだ。 初めて彼に逢った印章は「さわやか好青年」といった風。 3年前に「パオで働きたい」と相談された時は、おとなしい雰囲気にパオでは無理だろうと柔らかく断った。 そして、昨年の11月の講習会に参加してくれた彼は数年で別人の様に力強くなっていた。それはお子さんも大きくなったり、家族を養う責任感から来るものだと感じた。 そして、今年の1月から毎週土曜日6時からの実習が始まった。 仕事も忙しいらしく、寝るのが2時位になることもあったらしいが、 「来る」といったら来る。 半年間パオで毎週土曜日は掃除とかたずけに徹する。 パオも10年いろんな人と関わっているけれど、こんなにも実直な人は知らない。 「これじゃぁ、きっとサラリーマンは大変だろうなぁ。」と思う。 パンがやりたければやればいい! 「でもね、家族を養わないと・・・。」そう思うのだろうけれど、 「人生一度だよ。自分の思った事がつら抜けければ一番いい。」そんな話をした。 夫が楽しければ、家庭も楽しい。 そして、家族も楽しい。 美人な奥さんをもっているおー君。 君の人生は女房次第。 この半年間、今の仕事での悩みも随分あったようで、一時ぐっとやつれた。 その原因はパオと仕事の両立かと思っていたが、どうも違うようだ。 #
by paomama
| 2006-07-01 22:30
| 天然酵母パン
2006年 06月 30日
パオでは、2週間に一度「モルトの日」がある。 市販のモルトは使わずに、モルトも作る。 麦芽から煮出してモルトエキスを絞るというもの。 仕込んでから7時間かかり、オーブンを使うので待機していなければならない。 低温で仕込むので、営業日には出来ない。(パンを焼いている日のオーブンの温度は、夕方でも130℃位しか下がらない。) 当然休日返上となる。 そして、その間は日頃で出来ない部分の掃除となる。 お店の床や外回り、オーブンガラスを洗ったり、お店のエアコンフィルターを洗ったりとピカピカ! そして、7時間後煮出された麦芽を丁寧にしぼり、出来たエキスがモルトエキスなのだ。 市販のモルトと全く違うので、ゆるやかな発酵をパンがする。 時間をかけたゆるやかな発酵をしたパンは、それはそれはおいしいのだ。 風味と味わいが違う。 ん〜!そんな文章を書いていたら、全粒粉のどっしりとしたカンパーニュにオリーブオイルをたっぷりかけてほおばりたくなってきた。 ではでは、一番全粒粉の多い「ファーマーズブレッド」じゃがいもから起こした天然酵母に岩手産南部小麦と埼玉産農林61号というもちもち系の二種類の全粒粉を65%配合した田舎パンを食べたくなってきた。 土曜日限定なので土曜日まで我慢しよう。 #
by paomama
| 2006-06-30 06:04
| 天然酵母パン
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